従業員20名以上!注目の若手起業家のこれまでとこれから。
こんにちは。ライターのMC菩薩です。
今回お届けするのは、おそらくヒトツマミ史上最長のインタビュー企画。そのお相手は、株式会社ジラフの代表取締役社長・麻生輝明さんです。
麻生さんは、一橋大学商学部に在学する23歳(現在休学中)。大学4年生の時に株式会社ジラフの前身である合同会社ヒカカクを設立し、現在は同社の代表取締役社長として活躍されています。
株式会社ジラフは、買取価格比較サイト「ヒカカク!」」、iPhone修理料金比較サイト「最安修理.com」などのサービスを運営する、設立2年目のベンチャー企業。このヒカカク!というサイト、スマホから内視鏡関連機器までありとあらゆる商品の買取価格が比較できるという、まさに神のようなサービスなんです。
たとえばこちら、多くの一橋生も受験生時代に愛用したであろう「東大英単語熟語 鉄壁」。でも正直もう使うことも無いだろうし、出来ることなら高値で誰かに売りつけたい……。
そんな時は、「ヒカカク!」の検索窓に売りたい商品の名前を打ち込んで検索すれば……、
出てきた!
……のは「鉄壁」ではなく、鉄壁に収録されている英単語の音声データが収められた「鉄壁CD」でした。が、まあこれは誤差と考えていいでしょう。
こんな感じで、各買取業者の上限買取価格をひと目で比較することができます。見積もりも無料でできるし、買取価格の推移グラフなんかも見られてマジで便利なことこの上ないんですよね。QOL爆上がり。
もう一度言いますが、この神サービス「ヒカカク!」を考案された麻生さんは、現在我らが一橋大学に在学中。そんな麻生さんがどのような学生生活を過ごし、どのような思いで起業家として活動されているのか、めちゃくちゃ気になりますよね。ということで、さっそくインタビューの模様をご覧ください。
――本日はインタビューよろしくお願い致します。まず最初に、株式会社ジラフを設立された経緯を教えてください。
「一番最初は『ヒカカク!』というサービスを作るところから始まり、その後そのサービスを運営する母体として会社を作ろうという流れになりました。具体的には、ある投資家の方にいただいたアドバイスが大きなきっかけですね。僕は会社を設立する以前投資家になるという夢を持っていたんですが、その方に『どうしたら良い投資家になれるか』と伺ったところ、『自分でサービスを作って会社を成功させろ』と。当時は卒業まで残り10ヶ月で、それなら卒業までに会社を立ち上げようと思い立ちました。」
――起業家になりたいという思いはずっと持っていたのですか?
「中学生の頃から、いつか起業をしてみたいとは思っていました。僕は中学生の頃コミュニティサイトを運営していて、将来はそれの延長でインターネットを使った起業が出来るんじゃないかなという思いがあったんです。当時はライブドアの堀江さんやサイバーエージェントの藤田さんがインターネットを使った起業家として世間を賑わせていて、そういった方々からも影響を受けました。」
――ジラフの主力サービスである『ヒカカク!』は、いつ頃考案されたのですか?
「ヒカカク!は大学4年生の5月頃に思いついたので、ちょうど2年くらいやっている事になりますね。思いついたきっかけは、個人的な経験と周りの人達の行動です。僕は以前ほとんど使っていないタブレットを持っていたのですが、使わないなら売りに出そうかなと思ってオークションサイトを覗いてみたところ、諸々の手続きが面倒だなと感じてしまって。それなら買い取り業者に頼もうと思っても、僕の中で『買い取り業者=1円で本を買い叩かれる』というイメージがどうしても拭えず、売りに出しづらいぞと。そんなこんなで1年以上タブレットを売れないで過ごしている中、僕のゼミテンでやたらと物を売りたがる友人がいて、その人に物を売る時の行動について教えてもらったんです。その人曰く、服だったらこの店、本だったらこの店というように商品ごとに高く売れる店はある程度決まっていて、買い取りに出す時はそれを踏まえたうえで何店か歩いて周って確かめると。でもそれは大変だし、もっと簡単に各業者の査定額が比較できるサイトがあれば楽なんじゃないかと考えたんです。つまり、『買い取り版価格.com』みたいな……(笑)。それが、ヒカカク!を始めたきっかけですね。」
――ありがとうございます。起業した際、就職することへの迷いは無かったのですか?
「自分は当時就職先も決まっていて、このまま会社を続けるか、就職するかという迷いはありました。冷静な分析をすると、会社を続けるにはどうしても人なりお金なりの資本が必要になるじゃないですか。それで、一緒に働くいい仲間、または投資家のようにお金を出してくれる人が見つかれば、会社を続けようと。そういうわけでまずは仲間を説得しようとしたんですが、自分自身でも会社を続けるか曖昧なまま仲間を誘っても、ちゃんと口説けないんですよね。それで今度はお金を集めようと思い、詳しそうな友達に色々と相談してみたところ、その友達がベンチャーキャピタルを始めるから自分の会社に投資してくれるという話になって。そういう流れで資金集めの目処が立ち、自分も会社を続けるという決意を固めました。」
――その後、再び仲間を説得したと。
「いや、それが当時の仲間には結局みんな断られてしまって。全く新しく従業員を集める必要が出てきたので、友人のツテを辿ったり、SNS上で募集をかけたりして、今一緒にやっているメンバーを集めました。今はフルタイムで7~8人、全部合わせると20人くらいの従業員がジラフに所属しています。」
――そういえば、「ジラフ」という社名の由来が気になります。もしかして、「ask a giraffe」(
国立・大学通り沿いにある一橋生御用達のカフェ)から取ったのですか?
「その通りです。株式会社ジラフの英語での綴りは『jiraffe』なんですが、これは『giraffe』だと競争相手が多すぎてドメイン(co.jp)が取れないからですね。学生時代からask a giraffeに通っていて思い入れがあったのと、あの店の店名の由来が気に入っていて。どういうことかというと、キリンは首が長いので先がよく見渡せる、つまり食文化の未来を担う存在として、このカフェを定義したいと。僕らも、インターネットの領域の中で未来を見て、通用するような存在になりたいということで『ジラフ』という名前を付けました。」
――なるほど、そんな由来があったのですね。それでは、株式会社ジラフとしての今後の目標・展望を教えて下さい。
「現在、ヒカカク!ではスマホをはじめ古本や腕時計といった商材を扱っているのですが、今後はさらに商材の幅を拡大していきたいです。取り扱いが難しいと一般に言われる車、バイク、不動産といった商材に関しては、そういった商材を扱う既存のサービスを運営する外部の企業と共同で事業に取り組んでいきたいと考えています。長期的には、『化粧品だったら@cosme』『レストランだったら食べログ』というように、『買い取り=ヒカカク!』と思っていただけるようなサービスに成長させることが目標です。あとは、電車で隣に座った人が、ウチのサイトをスマホで見ているっていう場面に一度遭遇したいと思っています(笑)。まあ、僕はここ(オフィス)に住んでるんで、電車にはあまり乗らないんですが……。」
――マンションの一室をオフィス兼自宅にされているとのことですが、これはどうしてですか?
「純粋に、お金の問題が大きいです(笑)。このオフィスと別に自宅を構えようと思ったら家賃も別にかかりますし、あとは出勤とかも色々大変じゃないですか。睡眠時間も短くなるし。でも、オフィスにずっといるとなると、気持ちの切り替えが難しいというデメリットもありますね。」
――社長として、具体的にどのような仕事をなされているのか教えていただきたいです。
「基本的に、コードを書く以外の仕事は基本的に全て自分でやっています。もちろん業務によって従業員の住み分けをするのは良いことではあるんですが、新たな従業員を採用することや教育することにはお金が必要になるし、大変なことなんですよ。そういう意味で社長としての仕事は色々あるんですが、突き詰めると大きく2つに分けられると思っていて。1つは採用すること、もう1つは会社としてのビジョンを作ることです。ビジョンを作るというのは、会社としての目標、サービスとしての目標をどこに置くのかを考えることで、こういった構想がどれだけ人を惹きつけられるのかを決めると思っています。」
――今後、ベンチャーの業界全体が盛り上がっていくためにはより多くの学生がベンチャーを志望することが必要だと思うのですが、そのためには何が必要だと考えますか?
「ベンチャーの成功事例が増えることが必要だと思います。若手がベンチャーを立ち上げた時、世間からはどうしても失敗するリスクが高いというイメージを持たれがちだと思うんです。そこで、僕たち若手でもちゃんと会社を経営し、成功させることが出来るというのを、説得力がある事例として示すことが必要だと考えています。大学に対して求めることはあまりないというか、はなから期待していないというのが正直なところですかね。早稲田のような大学では一流の起業家の方が講義を持ち、その場で学生に対して新たな投資が決まるということもあるのですが、一橋大学ではそのようなことは一切行われないので……(笑)。ただ、どの大学に所属しているかというのはあまり関係ないと思っていて、一人で色々な場を訪れればそこにチャンスは転がっているし、個人の問題かなと思います。自分も4年生の時に早稲田のその講座を聴講していて、実際にそこで知り合った投資家の方から投資を受けたという経験があるので。」
――なるほど。それでは、続いて一橋大学出身の麻生さんの大学生活についてお伺いしたいと思います。まず、麻生さんが一橋を目指すようになったきっかけを教えて下さい。
「中学生の時に経営に興味を持ち、商学部でしっかりと経営について学べる一橋を目指すようになりました。あとは父親が一橋出身だったので、幼い頃からなんとなく一橋について認知はしていましたね。」
――その後、晴れて中学生の頃から目指していた一橋に入学したわけですが、まず1年生の頃は何に力を入れて大学生活を送っていらっしゃったのですか?
「 まず、しっかり授業を聞いて、勉強をしようという思いは持っていました。ただ、その頃の自分は世の中のことを知らなさすぎるし、経営を勉強していてもその実態はよくわからなかったので、学生であっても実際に働いてみた方がいいんじゃないかって思って。あとは、将来のことを見据えて、就職するなら自分にとってどういう会社がいいのか、就職するために大学生活で何をやるべきなのかというのを考えてみたりもしました。まあ、地に足付いていない状態だったとは思いますが、色々経験してみよう、何かしら真面目に考えてみようというのは常に意識していたと思います。サークルもやっていたし、インターンシップも1年生の後半から始めました。」
――インターンシップはどこでされていたのですか?
「事業の立ち上げや運営を学生が出来るというベンチャー企業を見つけ、そこでインターンしていました。合計3社でインターンをして、世の中の最新のサービスがどうなっているのかというのを肌で感じたり、実際に事業の中の1メンバーとして働く経験をしたり。こういったことは大学ではなかなか学べないので、いい経験になったと思います。逆に大変だったこともあって、例えばある会社でインターンをした時、完全に無給で学生がチームを組んで働くことになったんですよ。でもそれは学生にとって何のインセンティブも無いから、すぐメンバーが蒸発するんですね(笑)。毎週誰かがいなくなって、違うメンバーで仕事をするなんてこともあって。そういった環境でどうやったら物事が前に進むのかを考えて、いいメンバーを留めておけるような仕組みを作ったり、変な話ですけど、飛びそうな人と飛ばなそうな人を見定める力が付いたりしました(笑)。まあ、それも含めていい経験になったと思いますし、1・2年生の間はインターンにかなり力を入れたと思います。」
――それでは、続いてサークルについて伺います。我々と同じ広告研究会HASCに所属されていたんですよね?
「そうですね。他の文化系団体とも迷ったんですが、HASCは派手さは無いけど居心地がいいと感じて、自分に合っていると思いました。HASCではTwijamやAdfesなんかをやって、あとはFacebook上でミス・ミスターコンをやるっていうプロジェクト(ヒトコレ)もやりましたね。その当時、Facebookページでは『いいね!』を押した人だけが中身を閲覧できるっていう袋とじみたいなことが出来たんですけど、それを利用して『いいね!』をすると投票が出来るようになる代わりにエントリーもしちゃうっていう。結局230人くらい立候補者が集まりましたね(笑)。HASCって、常に何か新しいことをやろうっていう空気があるじゃないですか。HASCにいた2年半は自分の中のそういう指向性にさらに磨きをかけた時間だったと思うし、就活や今の事業にもそこは生きたと思います。」
――ありがとうございます。インターンやサークルが忙しい時期でも、授業にはちゃんと出席されていたのですか?
「商学系の授業は基本的にちゃんと受けていましたね。伊藤邦雄先生の会計の授業なんかは非常に面白かったですし、ケーススタディを通して経営について学んだり、考え方のフレームワークを身につけたり、今の自分に役立っている部分も大きいと思います。やっぱり自分より何倍も頭がいい先生の話が聞ける機会は貴重だったし、今通っても勉強できることがたくさんあると感じます。」
――インターンに力を入れ、勉強もしっかりやり、サークルにも所属されていたということで、かなり忙しい大学生活だったと思うのですが、どのようにそれらを両立されていたのかを教えていただきたいです。
「月火に授業をまとめて入れて、水木金でインターンに行くみたいな時間割の工夫をしたり……。でも、インターンに関しては、ちゃんとやり切れたかって言えるかは微妙なところですね。自分なりにちゃんとやっても、それで会社の期待に答えられていたかはわからないですし。会社からそれまでよりレベルの高い仕事を任せてもらえそうになっても、授業との兼ね合いでそこまでインターンに時間を割けないというのがネックになったり。しかも僕、2年生からはゼミが結構大変で。2年生の時は沼上ゼミに入ったんですが、週20時間くらい予習が必要で大変でした。ゼミはちゃんと一生懸命やったと思いますが、同時にそこで上手く手を抜く術を身につけました。忙しい中でも、ギリギリ怒られない程度の水準までレポートを仕上げるみたいな(笑)。」
――なるほど。後期ゼミはどこに入られたんですか?
「実は僕、ゼミに2個入ったんです。ゼミを選ぶとき、これでゼミに入るのも最後だと思うと欲張りな気持ちが出てきちゃって。迷っていたゼミ2つのうち、1つはサブゼミとして参加するのがOKなゼミだったので、2つとも入ろうと。入ったのが青島ゼミと伊藤秀史ゼミなんですが、伊藤秀史ゼミがかなり大変で、3年生の時はゼミに割く時間がかなり多かったと思います。ゼミを通してゲーム理論や価格理論など経済学を勉強したんですが、それって今自分がやっている事業にかなり近いんですよ。買取業者間で価格競争が行われていて、その結果価格がどう決まっていくのかとか。そういう意味で、ゼミで学んだことは今の自分に生きていると思いますね。あとは、ヒカカクを始めたきっかけである友人や、すでに起業していた友人など、ゼミを通した人との出会いも貴重でした。3年生の夏からは就活も始まって、ゼミと並んでこちらも結構大変でしたね。」
――先ほども話に出ましたが、一度は企業への就職を決めたんですよね。
「そうですね。4年生になり、いくつかの企業から内定を得て、一度はとあるベンチャーキャピタルへの就職を決めました。その流れでベンチャー界隈のイベントにいくつか参加し、結局自分でサービスを作ることになったんですが、それが4年生の6月とかですかね。その後は卒論を書いたり、再びインターンに行ったりしていました。」
――その後、卒業せずに休学するという決断を下すわけですが、これはどうしてですか?
「先ほど、サービスを続けるか、就職するかで悩んだという話をしたじゃないですか。その意思決定をした後、すぐに卒業するか否かっていう選択を迫られて。ここで再び悩むのは大変だし、意思決定を先送りにしようと思ったのが理由の1つです。もう1つは、何かあった時のリスクヘッジですね。やっぱり会社を経営するにはリスクがあって、そういったリスクに直面した時に社会的に学生の方が守られやすいというか、リスクを取る以上それをヘッジ出来る何かを持っておくべきだと思ったんです。あとは、学生だと起業家支援財団からお金を貰えるんですよね。それで、この2年は休学していて、今年卒論を出して卒業する予定です。」
――ありがとうございます。それでは、そんな麻生さんがどのような将来の夢を持っていらっしゃるのか教えて下さい。
「まずは自分の経営力を高め、起業家としてより大きなスケールで事業を進められるようになりたいです。あとは、一橋出身のネット起業家と言われてイメージされるのって、(楽天の)三木谷さんくらいまで遡るじゃないですか。自分がそこでイメージされるような起業家になって、一橋から起業家を目指す人がもっと出てくるようになればいいと思います。せっかく商業大学と呼ばれているわけですからね。」
――最後に、この記事を読んでいる一橋生にメッセージをお願いします。
「もっと存在感を出してもいいんじゃないかなと思います。能ある鷹は爪を隠す的な風潮ってやっぱりあると思うんですけど、それで可能性を自ら潰してしまっている人も中にはいるような気がして。このままだと時代に取り残されるような気がするので、もうちょっと出しゃばる人が増えて、他大との交流も積極的にやるような前衛的な大学に生まれ変わってもいいと思います。あとは、あの綺麗なキャンパスでしっかり思い出を作ってほしいですね(笑)。存在感を出してほしいとは言いましたが、一橋が早稲田っぽくなってほしいとは全く思っていなくて。これからも少人数でアットホームな雰囲気は保っていってほしいです。」
――インタビューは以上です。本日はお忙しい中、ご協力ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。
授業、ゼミ、インターン、サークルと刺激にあふれた大学生活を送っていらっしゃった麻生さん。お話を聞き、思わず自分の大学生活はこれでいいのかと考えてしまいました。貴重な大学生活、麻生さんのようにはなれずとも、悔いのない毎日を送っていきたいものです。
さて、そんな麻生さんが代表取締役社長を務める株式会社ジラフでは、現在時給1000円~でインターン生を募集中。とりあえず話を聞きたい、会ってみたいという人も歓迎とのことなので、興味のある方は株式会社ジラフHPの「CONTACT」、もしくは麻生さんのTwitter(@t_asof)まで連絡してみてはいかがでしょうか。
以上、「『一橋から起業家がもっと出てくればいい』―本気の一橋生起業家・麻生輝明さんインタビュー」でした!
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